MLSなう

Regulations

MLSのレギュレーション

単一事業体、サラリーバジェット、指定選手、CBA。欧州リーグの常識で見ると理解できないMLSの制度を、公式規定と労働協約から順に説明する。

単一事業体という土台

MLSは30クラブが加盟する北米最高峰のリーグだが、その法的な形は欧州のリーグと根本的に違う。各クラブは完全に独立した法人ではなく、リーグという単一の事業体の下に置かれている。選手が雇用契約を結ぶ相手はクラブではなくリーグである。

この一点が、ロスタールールから昇降格の不在まで、MLSのほぼすべての制度を説明する。以降の項目はすべてこの土台の上に乗っている。

シーズンとカンファレンス

30クラブが東西2つのカンファレンスに分かれ、各クラブが34試合を戦う。レギュラーシーズン最終節は「ディシジョン・デイ」と呼ばれ、2026年は11月7日に置かれている。

2026年はFIFAワールドカップが北米で開催されるため、5月25日から7月16日までリーグが一時中断する。レギュラーシーズンで最も勝点を集めたクラブにはサポーターズ・シールドが授与され、CONCACAFチャンピオンズカップの出場権に直結する。

プレーオフとMLSカップ

レギュラーシーズン後、両カンファレンスの上位クラブがプレーオフに進み、勝ち上がった2クラブがMLSカップを争う。年間王者はレギュラーシーズンの勝点ではなくこのトーナメントで決まる。

「勝点1位」と「年間王者」が別のタイトルとして併存するのは北米スポーツの標準的な形式であり、欧州リーグとの最大の体感差になる。

昇降格が存在しない理由

MLSには2部への降格がない。理由は競技的なものではなく、投資構造にある。

新規クラブの参入には多額の加盟金が必要になる。降格の可能性がある事業に対して、その金額を出す投資家はいない。降格制度の不在は温情ではなく、参入条件そのものである。

なお下部にはMLS NEXT Proがあるが、これは昇降格のためのリーグではなく育成のための階層で、サラリーキャップも存在しない。

ロスターの構成

ロスターは番号で役割が分かれる。1〜20番が「シニアロスター」で、ここに入る選手の人件費がサラリーバジェットの対象になる。21番以降は「サプリメンタルロスター」で、バジェットの計算に入らない。

シニアロスターの上限は20名だが、19番と20番は空けておくことが認められている。18名未満に減らした場合は、空き枠それぞれに最低額が自動的に計上される。

サラリーバジェット(2026年)

2026年のサラリーバジェットは1クラブあたり642万5000ドル。日本語の解説記事には547万ドルという数字が今も流通しているが、これは過年度の値である。

ただしこの金額は上限ではない。指定選手(DP)、U22イニシアチブ、各種アロケーションマネーによって、クラブは実質的にこれを大きく超えて支出できる。MLSは「支出が少ないリーグ」ではなく「支出が規制されたリーグ」だと理解するのが正確である。

指定選手(DP)とアロケーションマネー

DP制度は2007年のベッカム加入に合わせて導入された。クラブは最大3名まで、上限額を超える報酬の選手を保有できる。バジェットに計上されるのは上限額分のみで、超過分はクラブが負担する。メッシやソン・フンミンがMLSでプレーできるのはこの枠があるためである。

GAM(General Allocation Money)はリーグ全体のプールから配分される資金で、選手のバジェット計上額を引き下げる用途に使い、クラブ間で取引もできる。TAM(Targeted Allocation Money)は用途が限定された資金で、上限額を超える新規契約や契約更新、DPの非DP化に使う。

DPを2名に抑える代わりにU22枠を1つ増やし追加のGAMを得るモデルも選べる。「スター偏重」と「若手と選手層の厚み」のどちらを取るかという、クラブごとの戦略選択になっている。

最低年俸(2026年)

CBAで定められた2026年の最低年俸は、シニアロスターが11万3400ドル、リザーブロスターが8万8025ドル。

DPの巨額報酬と並べると差が際立つが、この二層構造こそがMLSの人件費設計であり、選手層の厚みがそのまま費用として計上される仕組みになっている。

CBAとフリーエージェンシー

リーグとMLS選手協会(MLSPA)が結ぶ労働協約が、最低年俸、フリーエージェント資格、401(k)や各種給付を規定している。現行協約の期限は2028年1月31日である。

2026年からは、24歳以上でMLSでの在籍4年以上という条件を満たした選手が、契約満了時にリーグ内でフリーエージェントになれるようになった。従来より早い段階で選手が交渉力を持つ変更である。

協約が2028年1月に切れるため、2027年には次期CBA交渉が焦点になる。ここで最低年俸や引退後の給付が動く可能性が高い。

2027年の秋春制移行

MLSは2027-28シーズンから、7月下旬に開幕し5月下旬に閉幕する秋春制へ移行する。12月下旬から2月上旬はウィンターブレイクとなる。

移行措置として2027年2月から5月にかけて特別シーズンが行われ、レギュラーシーズン14試合とプレーオフ、MLSカップが開催される。この結果が翌年の大陸大会出場枠を決める。

リーグは移行の理由として、世界の主要リーグとの日程統一、移籍市場での機会拡大、プレーオフが他競技と重ならないことを挙げている。Jリーグの移行と時期が近いため、日本から見ても影響の大きい変更となる。

Figures

2026年の主要数値

1クラブあたり。すべてMLS公式・CBA由来の確定値
項目金額・数備考
サラリーバジェット6,425,000 USDシニアロスター(1〜20番)が対象
シニア最低年俸113,400 USDCBAで規定
リザーブ最低年俸88,025 USDCBAで規定
指定選手(DP)枠3上限額超過分はクラブ負担
シニアロスター上限2019・20番は空けてよい
レギュラーシーズン34 試合最終節はディシジョン・デイ(2026年11月7日)
CBA期限2028年1月31日2027年に次期交渉